2008年11月18日火曜日

洞窟物語 WiiWare版 開発元インタビュー (の訳) [1/2]

cspic


Engadgetの第一報のあとイマイチ情報が伝わってこなくて寂しいので、ゲームサイト/ブログに載ったCave Story関連のインタビューを幾つか訳してみます。それぞれ重複する部分や分からなかった所は端折ったり意訳してしまっているので、そこんとこよろしく。


Nicalis Interview: Cave Story - WiiWare World
http://www.wiiware-world.com/news/2008/11/nicalis_interview_cave_story


伝説的なフリーウェアゲーム『洞窟物語』がWiiWareに登場するという話題は、多くの人々にとって嬉しいニュースになりました。日本人プログラマー、ダイスケ・アマヤ(Pixelというニックネームで親しまれています)によって制作された『洞窟物語』は、現在タイロン・ロドリゲスと彼のチーム"Nicalis"によってWiiへの移植作業が進められています。


WiiWare World: 私たちが知る限り、洞窟物語は近年最も人気のあるフリーウェアゲームの一つです。あなたが最初に洞窟物語に出会ったのはいつですか?そしてどのような印象を持ちましたか?

Tyron Rodriguez: 私が洞窟物語を知ったのは数年前、友人からの紹介でした。彼があまりにも洞窟物語を絶賛するので「やってみる価値がありそうだ」と思ったのです
そうやってゲームを始めた私は、ほんの数分でこのゲームの虜になりました


WW: あなたがこの傑作をWiiWareでリリースする意思をPixel氏に告げた時、彼はどんな様子でしたか? 確か彼は洞窟物語を商業展開する事に消極的だったと記憶しています。始めはやはり断られたのでしょうか?

TR: 最初に言っておきたいのは、Pixel氏が本当に親切で礼儀正しい人だという事です。日本人は皆礼儀正しいですが、彼の場合はその上を行きます。私がメールで自己紹介したときも直ぐに返事を返してくれましたし、その後のメールの遣り取りにも辛抱強く付き合ってくれました

そのメールの中で、私は何気なく「洞窟物語を商業ベースでリリースするアイデアをどう思うか」という話を持ち出しました。彼は決して無下に断ったりせず、比較的好意的な反応を返してくれたので、そこで改めて洞窟物語を我々の手で移植させてくれるように頼んだのです
私は純粋に多くの人にこの作品をプレイして欲しいと願っていました。だからこそPixel氏も我々に商業リリースの機会を与えてくれたのでしょう。それにもしかすると彼自身、任天堂のコンソールで自分の作品が動くという提案に心を動かされるものがあったのかも知れません


WW: WiiWare版で加えられた新たなグラフィックスやオーディオに関しては賛否両論の声が上がっています。これらは絶対に必要な変更だったのでしょうか? また設定でOFFにする事は可能ですか?

TR: 私たちは必要な変更だという考えで一致しています。新規のプレイヤーに対して新鮮なグラフィックスを提供する事は大切です
もちろん、オリジナルのアートワークはパーフェクトです。しかし、Pixel氏が最初に主要なキャラクターアートを描いたのは実に10年近くも前の事ですし、その他の要素に関しても現在の洞窟物語の3年前に制作された有名なBeta版(未公開)が元になっていると考えれば、私たちが知っている洞窟物語のアートとサウンドは意外と古くに作られたものなのです。それを現代に合わせて描き改める作業はあってしかるべきでしょう
私たちも当然、新しい・古いという以前にオリジナルのアートやサウンドを愛するファンの気持ちは理解できます。そういったファンに配慮して、WiiWare版でもオリジナルのアートワークと音楽を選択出来るようにしてありますよ


WW: 洞窟物語は非常に大きなファンベースを確立しています。そういったファンからは今回のプロジェクトに対してどのような反応が返ってきていますか? 祝福の声か、はたまたDeath treat(殺人予告)めいたものが届いたりしましたか?

TR: 初期にファンから届いた反応はほとんどが好意的なものでした。その後公開された新しいアートワークに関してはネガティブな反応もありましたが、それらを踏まえた上で製品版をより良い物にしていきたいと思います
私たちが恵まれているのはゲームのクリエイターであるPixel氏と一緒に活動している事です。彼が我々に足りない本質的な部分を補ってくれるでしょう。私たちがこうして活動している理由の一つは、今まで洞窟物語を支えていたファンのためですから、ファンからのフィードバックには大いに感謝しています


WW: 洞窟物語の北米でのリリースはいつ頃になる予定ですか? また欧州・豪州など国外に関しては?

TR: ホリデーシーズン内のリリースを目指して誠意制作中です。北米での売り上げがどうであれ、他の地域でも早々にリリースしたいと思っていますが、それには越えるべきハードルが幾つか有るでしょう


WW: Pixel氏に洞窟物語の続編を出す意思はあるのでしょうか? もしそうだとすれば(今作と同じく)完成まで5年待たなければならないと思いますか?

TR: 私も興味があって訊いてはいるのですが、恐らく彼もそんな質問にうんざりしているのでしょう、はっきりとは答えて貰えませんでした
続編が作られるかどうかは憶測するしかありません。しかし少なくとも5年掛かるというような事は無いと思います。Pixel氏も当時より遥かに経験を積んでいますし、オリジナルの『洞窟物語』は実際には5年の間に3つの異なるバージョンが作られていたのです

最も初期の『洞窟物語』を作った際、彼はデザインとプログラミングを学ぶため一旦制作を中断しました。その後、Beta版としてよく知られている2番目のバージョンに取り掛かる訳ですが、彼はそこでも一時制作を離れ『Ikachan』というよく似たゲームを先に完成させています。これはPixel氏が『洞窟物語』を完成させる過程においてとても重要な作品で、このIkachanが無ければ私たちが今こうやって『洞窟物語』の話をする機会も無かったでしょう
個人的にはIkachanも大好きな作品なので、WiiWare版でちょっとしたオマージュを奉げています

Nicalis' Tyrone Rodriguez talks Cave Story
http://www.nintendowiifanboy.com/2008/10/14/wii-fanboy-interview-nicalis-tyrone-rodriguez-talks-cave-story

Wii Fanboy: WiiWare版の元となったコードはPC版ですか、それとも新しく一からコードを書き下ろしているのでしょうか? また、WiiWare版では現状何人のスタッフが働いていますか?

TR: WiiWareにはPC版のオリジナルコードを引用しています。現在このプロジェクトに関わっているスタッフは6人で、殆どはサウンドとグラフィックの向上に割かれています


WF: 新たに収録される曲はどのようなコンセプトでアレンジされますか? 例えば洞窟物語のオリジナル楽曲は明確な8-bitスタイルです。またサウンドトラックをCDやダウンロードで配信する予定は?

TR: 楽曲に関してはオリジナルを第一に置いています、サウンドに関してもグラフィックと同様にオリジナルを尊重しつつ、私たちに出来る限りの改善を施していきたいと思います。今のところサウンドトラックを何らかの形で提供する予定はありませんが、可能性としては考えています


WF: 先日、任天堂からDSWareのサービスが発表されました。洞窟物語をDSWareで配信するプランはありますか?

TR: DSWareがWiiWareと同様のサービスになるのであれば、素晴らしいプラットフォームだと思います。ただ、いまはWiiWare版に注力しているので、DS向けには何のプランもありません

The Cave Story interview - we get the full skinny from Nicalis frontman Tyrone Rodriguez, and Pixel himself
http://gonintendo.com/?p=58250

RMC: Pixel氏はこのWii版にどの程度関わっていますか?

TR: 彼はこのプロジェクトに深く関わっています。『洞窟物語』は彼のアイデア、彼のデザイン、そして彼のゲームですから。彼が関わっていないWii版なんて私だって認めません


RMC: Wii版の操作はどのようなものになりますか? モーション・コントロールやクラシック・コントローラーへの対応は?

TR: プレイに必要不可欠なボタンは揃っているのでWii Remoteでも遊べるようになっています。ただ、モーション・コントロールは使いどころが無いので対応予定はありません。クラコンには対応します。クラコンのボタン配置はPixel氏本人のカスタム設定ですよ

RMC: 16:9のワイド画面やドルビー・プロロジックIIはサポートされますか?

TR: DLPIIに関してはサポート予定はありませんが、ワイド画面には対応したいと思っています
ただ、アスペクト比が変わる事での技術的な問題や、一画面に表示される内容が増える事でゲーム性が損なわれるシーンがあるかもしれないので、その辺りは調整されるかもしれません


RMC: 音楽に関しても期待しています。オリジナルの楽曲がそのまま使われますか?それとも何か別の曲が用意されるのでしょうか?

TR: Wii版ではYann van der Cruyssennurykabeによるリアレンジが新たに加えられる予定です。出来上がった曲はPixel氏にチェックしてもらっています
もちろんオリジナルの楽曲やグラフィックも収録され、ゲーム中個別に選択できるようにしてあります。例えば「オリジナルのグラフィックス + アレンジ曲」という組み合わせや、その逆も選択可能です

洞窟物語は巨大なファンベースを持つ作品ですから、NicalisのスタッフたちはそうしたファンやPixel氏の期待に答えようと精一杯努力しています。でももしWii向けに書き下ろされたグラフィックスやサウンドが気に入らなくても、オリジナルを選択できるようにしてありますから安心してください


// 以下、Pixel氏へのショートインタビュー

RMC: Wii版のプロジェクトに参加して、どのような印象を持たれましたか?

Pixel: 夢のようというか・・・ちょっとまだ信じられないくらいです。ファンの皆さんのお陰でこのようなプロジェクトに参加できて、自分は本当に幸せ者だと思います


RMC: 洞窟物語がここまで大きな存在になる事は予想していましたか?

Pixel: 制作当時はフリーウェアのゲームとしてはなかなかのものが出来たという自負はありました。ただ、これほど海外で人気を集める事は想像もしていませんでした


RMC: WiiWareでのリリースに向け、今の心境をお聞かせ下さい

Pixel: 私自身はWiiWareにそれほど馴染みが無いのでまだ実感が沸かないのですが、WiiWare版で初めてプレイする人や、今まで洞窟物語を応援してくれていたプレイヤーからどういった反応が返ってくるか、今から楽しみです


RMC: タイロンさん、Pixelさん、どうもありがとうございました!


訳したいのがもう一つあるんだけど、長くなるので一旦ここで区切ります。




追記: WiiWare版洞窟物語は北米では2010年3月22日から配信開始されました、現地のレビューは以下のエントリでまとめています
dekunology: 洞窟物語 Wii版の海外レビュー総まとめ 

2008年11月16日日曜日

『ストII HD Remix』にOverClocked ReMixが参加

話自体は結構前から聞いていて、紹介するタイミングをすっかり逸していたんですが、今月北米でXBLAとPSNの配信が始まる『Super Street Fighter II Turbo HD Remix』に新規追加されるアレンジ曲として、ゲームアレンジコミュニティ OverClocked ReMixが制作したストIIリミックスアルバム『Blood on the Asphalt』の曲が収録されています。

もちろんカプコンオフィシャルです。
もちろんゲーム中に使われます。

そう、実際にゲームでOC ReMixの曲が流れます!



経緯についてはArs Technicaのインタビュー記事に載っていて、要は単純にHD Remixのプロデューサー氏が『Blood on the Asphalt』を気に入り、そのまま正式にゲームへの起用を打診してきたんだとか。OCR側もそれを受け入れて、代表のDavid Lloyd氏(djpretzel)とBotAのプロジェクトリーダーを務めたShael Riley氏がSoundtrack Directorとして『HD Remix』に参加。ゲームに合わせたリアレンジの修正や進行の管理など、カプコン側と各曲のリミキサー陣との間に立って調整役として動いたようです。

インタビューではdjpretzelが「僕たちの挑戦が、ゲームメーカーとファンコミュニティが協力して何かを成し遂げる良い先例となれば」と意気込みを語っているほか、「今後も機会があればサイトとしてゲームの音楽制作に携わりたい」とも話しているので、もしかしたら将来的にOC ReMixが全曲プロデュースしたゲームが出るかも?

・・・うーん、凄い。
Virtが魂斗羅4に参加したときも興奮したけど、今回はOCRのサイト自体が主体となってゲームメーカーと協力するという話で、Virtの時以上に驚かされました。いやーたまげた。



// (余談というか蛇足)
実はカプコンというと、ちょっと前に出た『Bionic Commando Rearmed(バイオニックコマンドー マスターD復活計画)』でも、ゲームのギター演奏動画で一躍Youtube's StarになったChris Kline(Vertexguy)さんをテーマ曲のギターアレンジに起用していたりします。その辺り、特にCAPCOM USは良い意味でミーハー気質な所があるのかもしれませんね。

2008年11月15日土曜日

Lost Windsが日本でも出るそうで

スクウェア・エニックス、世界が賞賛したWiiウェア用ソフト『ロストウィンズ』を日本で発売 - ファミ通.com
スクエニGJ!

・・・と、これはもちろん嬉しいんだけど、小規模メーカーの海外WiiWareってこうやってパブリッシャーが見つからないと日本で出せないもんなのかしら?

先月出た『World of Goo』なんて「今すぐやれ!直ちにやれ!女房を質に入れてでもやれ!」というくらいに絶賛されて、メタスコアが(同時期発売で同じ物理演算ネタの)LBPと肩を並べるレベルにイキ切っちゃってるけどいまだに日本には来てないし、何より『洞窟物語』がちゃんと日本でも出るのか不安なのですよ。

マイクロソフトがXBLAで頑張ってるみたいに、良さげなタイトルは任天堂自身がローカライズをサポートすれば良いのに。

2008年11月13日木曜日

100万本以上売れたカプコン作品リスト

Videogaming247 より)

IR資料 2008年9月30日までの世界累計
http://ir.capcom.co.jp/english/data/million.html
1位~10位までは動画付き。改めてモンハンP2Gはバケモンだな、日本のみの販売&発売6ヶ月で売り上げ歴代6位とか。

2008年11月9日日曜日

Machinima.comが資金調達に成功 - MAD動画はビジネスになる?

Machinima.com Raises $3.85 Million
http://newteevee.com/2008/11/06/machinimacom-raises-385-million/

マシニマの総合ポータルサイト、Machinima.comがシリーズAの投資ラウンドでベンチャーファンドと個人投資家から合計385万ドルの資金を集めたという話題。ゲーマーサイドから見た、より詳しい解説がKotakuに載っています。
http://kotaku.com/5078335/machinima-raises-millions


マシニマとはゲームのキャラクターやゲームに使われている技術を流用して作られた映像作品の事で、日本で言うところのゲーム系MAD動画の一種。

内容的には、キャラクターの台詞を吹き替えただけの単純なものから、MODツールやグラフィックエンジンからオリジナルのキャラクター、ステージを作成してドラマを展開するような本格的なものまで作られていて、今月にはニューヨークでマシニマ作品を集めた映画祭も開催されています。

また、トヨタ(http://youtube.com/watch?v=u15HmEMp2Qc)やネスレ・キットカット(http://youtube.com/watch?v=OrAHBk4ZAeQ)のように、マシニマを広告プロモーションに活用する企業も出てきています。


今年評判を呼んだマシニマとしては、Half-Life2/Portalのエンジンを使った『Portal: A Day in the Life of a Turret』が字幕付きでニコニコ動画に上がってるので例としてリンクしときましょう。



マシニマが注目されている背景には、YoutubeやDailymotionのような動画サイトの普及や、ゲームグラフィックスの進歩、MOD制作コミュニティの成熟などがあり、その流れを受ける形で昨年MicrosoftがHalo3の発売に合わせてマシニマ制作者へのガイドラインを公表したことも、大きな転換期となりました。

Machinima Licenses Spell Out New Rules for Creators
http://www.wired.com/culture/art/news/2007/09/machinimalicenses

この記事にはガイドラインの規約に対するマシニマ制作者からの「線引きをしてもらえれば活動しやすくなる」「ライセンスの縛りが厳しすぎる」といった賛否両論の声が載っていますが、どちらにせよこうやってメーカーが公にマシニマの活動に言及したというのは、それだけマシニマ制作シーンが盛り上がっているという証拠でしょう。
このMicrosoftの発表後には、WoWのBlizzardもエンドユーザー向けマシニマライセンスを公開。Valveもマシニマ制作者に配慮したゲームオプションやMODツールの提供について言及するなど、他のメーカーからもマシニマ制作をサポートする動きが出ているようです。


Machinima.comは月間300万人のユニークユーザーを抱える最大手のマシニマポータルサイトで、主な収益源はゲームメーカーとのタイアッププロモーションや外部ECサイトへの誘導報酬。金融不安下にあって今回この時期にまとまった資金を得られた事は、年間ゲーム販売の3割~5割が集中する11月末からのホリデーシーズンに向けて大きな弾みになると書かれています。

また、Machinima.comの動画はYoutube上でも公開されておりhttp://youtube.com/user/machinima)視聴ページの広告からも利益を得ているようです。
このMachinima Channelは、Youtube上で7番目に購読者数(Subscribe)の多いチャンネルであり、最も再生数の多いHalo3のネタ動画は、現時点で600万回以上再生されています。



ゲーム系MAD動画にプロモーション効果があるというのは、日本でもアイドルマスター×ニコニコ動画のニコマスで誰もが認める事になっていますが、こうやってビジネス展開に持っていける辺りが如何にもアメリカ的。
ナムコなども例のブルーバックコマンドのように、さり気無くニコマス職人をサポートする姿勢を見せていますが、いかんせん日本のファンコミュニティは本家が公認したりビジネスに利用しようとすると途端に盛り下がる傾向があるので、今までどおり、穏やかな黙認と職人さんの片思いという図式が一番美しいメーカーとユーザーの関わり方なのかもしれません。もったいないけどね。