↑の続き。
続くとか言っておきながら年越してしまいました・・・すんません。
MTV Multiplayer: How‘Cave Story’ Became A WiiWare Game
http://multiplayerblog.mtv.com/2008/10/15/how-cavestory-became-wiiware
『洞窟物語』はダイスケ“Pixel”アマヤというアマチュアクリエイターによって制作されたオールドスクールな2Dプラットフォーマーであり、ゲーム界最大のインディー・サクセスストーリーとして知られている。
しかし、彼(アマヤ)はこの成功から、これまで一切の対価を受け取っていない。
洞窟物語はフリーウェアのPCゲームとして公開されているのだ。
洞窟物語はこれを愛したファンの手によって、Macへ、PSPへ、そのほか幾つものプラットフォームへと移植されているが、これまで商業ベースに乗る事は無かった。歯車が回り出したのはNicalis Inc.のリーダー、タイロン・ロドリゲスがPixelに接触した時からである。
「実を言うと最初はPixel氏に断られる事も覚悟していました」タイロンはそう振り返る
「それでも私たちは何とかしてこの作品に機会を与えたかったのです。数ヶ月に及ぶ交渉の末、最終的にはPixel氏に商業化を認めて貰う事が出来ました」
以前筆者はGo Nintendoの代表であるKevin Cassidyから、彼が人生で唯一泣いたゲームが、この『洞窟物語』だと告白されたことがある。
一般的な洞窟物語評と比べると彼の体験は少々極端な例だが、そこにあるのはこの作品に対する純粋な賞賛の気持ちに違いない。
「私は今やこのプロジェクトに深く関わる立場なので、偏った意見に聴こえるかもしれませんが・・・」そう前置きして、タイロンも彼自身の“洞窟物語”を語ってくれた
「私にとっても洞窟物語は特別な存在です。グラフィックス、サウンド、コントロール、ストーリー・・・その全ての要素が、商業作品、特に80年代末期から90年代初期に掛けて作られた同種のビデオゲームの中でも上位の水準にあると思います」
「私のイメージする洞窟物語は『NESかSNESの時代に発売されるはずだったゲーム』なんです。それが何かの間違いで倉庫の奥にしまい込まれ、その後誰からも忘れ去られ・・・ふとした切っ掛けで、いまこうやって目の前に姿を表したのだという解釈です」
「もちろんこれは個人的な空想であって事実とは違います。それでも洞窟物語は、子供の頃の私が8-bitや16-bitのゲームを何故あれほど楽しんでいたのか、何故私がゲームを愛する人間になったのかを、いまの自分に思い出させてくれるような気がするのです」
洞窟物語のプラットフォームはXBLA、PSN、WiiWareの3つの候補から、最終的にWiiWareが選ばれた
「WiiWareでリリースするためには、任天堂の審査を通過しなければなりませんでした。よくある『PCゲームのお手軽移植』とだけは思われたくなかったので、そこでグラフィックスの新規書下ろしや新たなコンテンツの追加を任天堂側に提示したのです」
「その結果、任天堂はWiiWare版のリリースを承認し、いまでは積極的に開発をサポートしてくれています」
タイロンによれば、『Cave Story』が先日のNintendo Fall Summitで発表される運びになったのも任天堂側の計らいだったという。
筆者は洞窟物語に関して、会場で15分間のデモプレイをしたに過ぎない。しかしその短いプレイ時間でもクリエイター:アマヤの情熱を十分感じる事が出来た
(訳注:MTVのPatrick KlepekさんはNintendo Fall Summitのレポートで、最も印象に残ったゲームとして『Cave Story』の名を挙げています)
「アマヤさん本人も世界の人々が『Cave Story』をプレイする日を心待ちにしているはずです」
タイロンはそう確信している
「彼は心から洞窟物語のファンに感謝しています。ファンたちの熱心なサポートがあったからこそ、いまの洞窟物語があるのですから」
補足・備考・See Also的なもの
オフィシャルサイト
Cave Story for WiiWarehttp://www.cavestory.com/
「つきのうた」のアレンジが素敵な海外公式
ちなみに、いつの間にかドメインがcavestorywii.comからcavestory.comへ変わっています。もしかしてWii以外でも出る?・・・DS?
幻のPSP版
洞窟物語の家庭用移植に関しては、実は数年前にも海外メーカーによるPSP版の噂が持ち上がっていました。ゲーム雑誌にも紹介記事が載り、パッケージのモックアップ(→)も作られたりと、当時注目を集めていたものの、掲示板で質問を受けたPixel氏がPSP版の噂を否定した事で立ち消えになり、この一件が今回のインタビューでの「断られたのでは?」だとか「断られる事も覚悟で」というやり取りに一部繋がっていると思われます。
ただ、このPSP版に関しては、制作したとされるメーカーがPixel氏に正式な許可を得ずにプレスリリースを出していた事や、PSPのライセンスや開発機材も碌に揃えていない怪しげな会社だったことが後にファンやゲームサイトの追求によって明らかになっているので、結果的には安易に商業化を認めなかったPixel氏の判断が正しかったと言えるでしょう。
英訳パッチ
project "Cave Story" ~ aeon genesis ~http://agtp.romhack.net/project.php?id=cavestory
Pixel氏公認の翻訳パッチ。WiiWare版の英文テキストもこの英訳が使われることが決定しています。
面白いのは、この翻訳を手掛けたAGTPが『風来のシレン』や『ライブアライブ』など、海外未発売のタイトルを(もちろん非公式に)海外ゲーマーに紹介し続けている、ロムハック界の有名ハッカーチーム・翻訳チームだということ。
ネット上ではAGTP以外にも、古くは『聖剣伝説3』『ラジカルドリーマーズ』から、最近完訳された『Fate/Stay Night』 『MOTHER 3』まで、海外未発売タイトルの翻訳活動が盛んに行われているので、翻訳パッチが作られること自体はそう珍しい事ではないですが、そのファン訳がこうやって正式な製品版にそのまま使われるのは恐らく初めてだと思います。
・・・といっても、洞窟物語は元々フリーウェアのオリジナル作品なので、ファン・トランスレーションやファンサブに付きものの海賊行為とは無縁であり、ファンやユーザーの翻訳が本家に取り込まれるというのもフリーウェアの世界ではわりと良くある話なので(有名どころだとWinampのT-Matsuoさんとか) 商業作品としては珍しいケースでも、フリーウェア作品として見ればごく自然な流れかも知れません。
過去のインタビュー
洞窟物語のPixelへインタビュー(解答原文版)http://bmky.net/diary/file/20050626_interview.html
暴満館さんによる2005年のインタビュー訳載記事。
インタビュアーのDerek Yuは、大手インディーゲーム情報サイトTIGSourceの主催者であると同時に、『Aquaria』で2007年度のIGF最優秀賞を獲得したアーティストでもあるという、海外インディーゲームシーンのキーパーソンの一人。
『Aquaria』については、自由遊戯黙示録さんが紹介記事の中で洞窟物語からの影響について指摘されています。
自由遊戯黙示録:Aquaria: 遥か海を越えて
インディーゲームコミュニティへの浸透
TIGSourceのインディーゲーム・データベースTIGdbに書かれたレビューの一節は、洞窟物語がインディーゲームコミュニティにどのように受け入れられたのかを端的に表しています――同じ志を持つ創作者を励まし、奮い立たせたという意味で、洞窟物語の存在はインディーゲーム界における『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』であり『パルプ・フィクション』だ
インディークリエイターのうち、洞窟物語について何かしら具体的な言及をしている人物の例としては、先のDerek Yuの他に、Joakim Sandberg(『Noitu Love 2』『Chalk』)やMare Sheppard/Raigan Burns(『N+』)がいて、それぞれ「個人的に好きなゲーム」「商業の舞台に上がるべきフリーゲーム」の一つに洞窟物語の名前を挙げている一方、Jonathan Blow(『Braid』)は「他人の意見は尊重するけど、いくらなんでも持ち上げ過ぎじゃないか?」という一歩退いた立場から、洞窟物語を手放しで称賛するコミュニティへ苦言を呈しています。
また、洞窟物語からの影響を公言しているNicklas Nygren(『Knytt Stories』)は、今回、Nicalisの立ち上げメンバーとしてWiiWare版『Cave Story』の開発に参加しているそうです。
ファンの手でMac/PSP(他にDS/Linux/GP2X/Xbox/AmigaOS)に移植され、ファンの手で翻訳され、ファンの手で広められ、ファンの手で商業リリースされようとしている・・・という「どんだけ愛されてんだよ!」と突っ込みたくなるような洞窟物語のインディー・サクセスストーリーは、とりあえずWiiWare化で一旦の区切りとなります。
「追加要素ありとはいえ、フリーで公開されているゲームがどの程度市場に受け入れられるのか」「そもそも日本語版はどうなってんだ?」等々も気になりますが、とりあえずWiiで洞窟出るってだけで嬉しいニュース。ファンも、Pixel氏も、作っているNicalisのスタッフも、みんなが報われる移植になれば良いですね!
// 追記
書いてるうちにまとまらなくなってきたので、たぶん変な文章になってます(ゴメン)
書き上げた後に開発Blogを覗いたら、ちょうど雑誌掲載情報が
って、『罪と罰2』と並んで掲載されてるよ!