昨年12月に、自由遊戯黙示録さんが更新停止に際して素晴らしいフリーゲーム史の記録を公開されたり、何故かあんまり話題になってないけど『ひぐらしのなく頃に』のオリジナル同人版(PC版)が英語圏で正式に発売されたりと、この年末年始はフリーゲームや同人ゲームについて考えるいい機会になりました。そんな時にふと、以前Gamasutraに掲載されたABA氏・OMEGA氏・Jonathan Mak氏のインディークリエイター座談会を思い出したので、「読み返してみるかなー」とググッていたら、それを翻訳されているブログを発見↓
Wired-Lynx::blog » シューター円卓会議 : ABA, JonMak, Omega 撃ち方始め!
http://blog.wired-lynx.net/?page_id=61
サウンドの話から、お互いのゲーム制作・プログラミング、日本のアマチュアゲームを取り巻く環境(コミケ、同人ショップ、ウェブ)などに関して、海外からの視点も入った面白い座談会なので、お三方のゲームが好きな人やインディーゲームに興味が有る人はぜひ読みましょう!(翻訳してくれた方に感謝!)
この座談会で語られている「海外から日本の同人ゲームが買えない問題」は、先程の『ひぐらし』の例や、Rockin' Androidによる『スグリ』『空飛ぶ赤いワイン樽』などの英語圏でのリリースで多少緩和されつつあり、「制作者同士の交流不足」や「フリーゲームと同人ゲームではコミュニティが違う」といった国内アマチュアゲームコミュニティの課題についても、最近はIGDAのイベントで同人サークルとフリーゲーム制作者が同席する機会が増えていたりと(ABA氏やOmega氏も講演してましたね)、これが書かれた2008年当時と現在を比べる意味でも面白い読み方が出来るかもしれません
・・・と、まあリンクするだけじゃなんなので、ここで別の角度から補足(というか蛇足)をひとつ
この座談会で進行役を務めているGamasutraのBrandon Sheffieldさん。「同人」という言葉が持つ微妙なニュアンスに気を配っていたり、ワンダースワンの開発環境「Wonder Witch」に言及していたりと、日本のアマチュアゲーム制作に対する見識の深さを感じられる事と思いますが、実は彼、Gamasutraの仕事とは別に、日本の同人ゲームの海外への伝播に重要な役割を担っていたInsert Creditというウェブサイトを運営・執筆していました
Insert Credit
http://www.insertcredit.com/
Insert Creditは、Brandonさんの他にも複数のライターが参加。主流ゲームメディアの目の届かないカルトなゲームニュースを取り上げるサイトとして、コアなゲーマーにはよく知られた存在で、「ヨーロッパのグループがメガドライブで新作ゲーム作ってるらしい」とか、「SIGGRAPHで披露されたN64版FF7デモが発掘」とかそういうマニアックなネタは当時大抵ここ経由で広まっていました。自分も前のブログをやっていた時によく引用したのを覚えています
そのアンテナは日本の同人ゲームにも及んでいて、自分が『トラブルウィッチーズ』や『Cloudphobia』といった同人ゲームを知ったのもInsert Creditで紹介されていたからだし、前に紹介したかもですが『Melty Blood』や『Eternal Fighter Zero』のレビュー(MB/EFZ)が掲載されていたのもこのサイト。自由遊戯黙示録さんの文章の中にも『洞窟物語』の海外への広がりを語る上で欠かすことの出来ないサイトとしてInsert Creditの名前が出てきます
今でこそ、Canned DogsやSankaku Complex、Japanatorなど、「オタク的」な文脈で日本の同人ゲームが海外のブログ・サイトで紹介されることは珍しくは無くなっていますが、そのずっと前から「ゲーム的」な対象として同人ゲームを取り上げ、且つ、ゲーマーコミュニティに影響力があった有名サイトというとほぼInsert Creditだけだったろうと個人的には考えています
Brandonさんが多忙の為、いまはサイト活動休止状態になってしまっていますが、それもそのはず、彼の現在の役職はGamasutraのSenior Editor(上級編集者)、そしてGamasutraの母体である雑誌 Game Developer Magazineでは、Editor in Chief(編集長・編集主任)を務められています。つまり、日本の同人ゲーム/フリーゲームに精通した書き手が、米国ゲーム開発者向けメディアの、まさにド真ん中で活躍しているんですね
海外の若手ゲーム開発者が、ABA氏やOMEGA氏、『洞窟物語』のPixel氏や、『Warning Forever』のHikoza氏からの影響やリスペクトを公言するのを、嬉しく思うと同時に不思議に感じていたんですが、これを知って合点が行きました。やっぱりメディアの役割は大きい